天使か悪魔か16

そこは旅館の一室だった。

しかし、旅館とは思えないほど機械で埋め尽くされている。

レトロな印象を受ける機械類の中に、二人の姿があった。

一人は長髪で顔が覆われた男で、もう一人は女将だ。

男はひどく「大人しいうさぎ」を見つめている。

檻にも入っていない、というかこの部屋には檻らしきものが見当たらない。

そういったものは必要ないのかもしれない。

男はそのうさぎに顔を近づける、特に「瞳」を集中的に見ているようだ。

その瞳は普通のそれとは違っている、良く目を凝らして覗くと、何やら病室のような場所が写っている。

「もうすぐ生まれるのか……」

男はつぶやく。

「ええ、そのようですね」

女将がそれに答える。

「コウくんは最後の最後で後悔していたね?」

「ええ、穴の中で後悔してました」

「今までした悪い行いのせいで天罰が下ったんだって」

「ええ、泣きながら言っていましたね」

「そう、コウくん泣いていた、もうしない、もう二度としないって」

「ええ、言ってました」

「じゃあ、今度こそちゃんと生まれ変われるかな?」

「そうですねぇ、どうでしょうか?」

「あの心優しい教師のお腹に転生するんだから、大丈夫でしょう?」

「ふふ、どうなんでしょうね?」

「そうだなぁ、これから生まれてくる赤子は……はたしてどっちかなぁ?」

「天使か悪魔か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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