そこは旅館の一室だった。
しかし、旅館とは思えないほど機械で埋め尽くされている。
レトロな印象を受ける機械類の中に、二人の姿があった。
一人は長髪で顔が覆われた男で、もう一人は女将だ。
男はひどく「大人しいうさぎ」を見つめている。
檻にも入っていない、というかこの部屋には檻らしきものが見当たらない。
そういったものは必要ないのかもしれない。
男はそのうさぎに顔を近づける、特に「瞳」を集中的に見ているようだ。
その瞳は普通のそれとは違っている、良く目を凝らして覗くと、何やら病室のような場所が写っている。
「もうすぐ生まれるのか……」
男はつぶやく。
「ええ、そのようですね」
女将がそれに答える。
「コウくんは最後の最後で後悔していたね?」
「ええ、穴の中で後悔してました」
「今までした悪い行いのせいで天罰が下ったんだって」
「ええ、泣きながら言っていましたね」
「そう、コウくん泣いていた、もうしない、もう二度としないって」
「ええ、言ってました」
「じゃあ、今度こそちゃんと生まれ変われるかな?」
「そうですねぇ、どうでしょうか?」
「あの心優しい教師のお腹に転生するんだから、大丈夫でしょう?」
「ふふ、どうなんでしょうね?」
「そうだなぁ、これから生まれてくる赤子は……はたしてどっちかなぁ?」
「天使か悪魔か」
終わり