天使か悪魔か2

ある日学校で野球の試合があった。

他クラスとの対抗試合だ。

ぼくは自転車に乗れないくらいの運動オンチ。

クラス対抗の野球試合をやるなんて聞いたら、緊張と不安で胸が苦しくなる。

やりたくない、逃げ出したい。いっそ「体調がおかしくなった」って言って休みたい!

自分が試合に出るなんて考えられない……。

でも、先生が「コウくん、ファイト♪」って。

あんなに笑顔が素敵な先生に言われたら逃げ出せなくなった。

こうなったら出場だけでもしよう、先生の期待に応えられなくてもいいから…。

出場だけは。

ポジションはどこだろう?クラスメイトが話しかけてきた。

「コウは『ピッチャー』やれよ」

え?

「コウが運動できないのはみんな知ってるから、お前が他のポジション守ってそこを敵チームに狙われるよりかましだろ?」

「え?急に言われてもできないよ?」

「いいから!お前はゆるい球投げてバンバン打たせていいから!俺たちが後ろ守ってるから大丈夫さ」

なるほど、ほんの少しだけ不安が軽くなったような気がする。

だってどんな球を投げても届きさえすれば文句は言われないってことだから。

マウンドに立つと他のクラスの生徒の視線がすごく気になる。

ぼくの運動オンチは有名だから、きっと「お前がピッチャー!?」って顔をしているに違いない。

「コウくーん」

先生の声だ、先生がぼくに手を振って応援してくれている。

よし、なんだかやれそうな気がしてきた。

 

 

 

つづく