天使か悪魔か3

試合は順調に進んだ。

あえてぼくが敵に打たせて、仲間がそれをカバーする。

時には打たれることなく三振を取ってしまうなんて事もあった。

球種やコースは特に考えず、真っ直ぐストライクゾーンにほうり込んだ。

「きゃー」「パチパチパチ」「わーわー」

周りをよく見たらクラスの女子も応援に駆けつけてくれたみたいだ。

ぼくのピッチングにハラハラドキドキして、バッターが打たない事を願っているようだ。

三振を取った時なんかジャンプして喜んでいる。

ぼくはこのギャラリーが「ぼくの味方をしてくれている!」と良い気分になった。

運動の出来ない自分が野球で戦えている、しかもピッチャーだ。

点数だって取られていない。

みんながぼくを見ている、応援している。

そう、先生だってぼくの事を見ている。

そしてぼくが立派に投球している事をわが事のように喜んでる。

ぼくの内部で実感の伴った喜びが湧き上がった。

試合前の心境が180度変わって、不思議と自信さえ感じるようになった。

そのときだ。

カキーン

打たれた。

 

 

 

つづく