天使か悪魔か10

まだまだ続く、マラソンの時はわざわざ台車を使って、最下位の人とシンヤの位置を入れ替えた。

あは、あはははは!

ボール投げの時は投げる瞬間、シンヤを半回転させ逆方向に向けてあげた。

当然、ボールは投げようとした方向とは反対の方向に飛んでいく。

つまり真後ろだ。

けけけ。

あ、いたずらに夢中で忘れていた。

肝心の自分の記録を伸ばすのにはこの力を使っていないじゃないか。

いたずらが楽しすぎてそんな単純なことにも気づかなかった。

……まぁいい、最終的に成績表を「5」に書き換えれば済むことなのだから。

シンヤはさすがに気味が悪くなったのか、保健室に連れて行かれるようだ。

けへへへへへ、まだ許さない。

「ピポパポピン」

今度は教室に戻り、女子のスカートを5、6人分シンヤのかばんに放り込んだ。

それから体育の授業が終わり、着替えの時間になって

女子たちが騒ぎ始めた。

「スカートが無い!」

騒ぐのも当然のことなんだけど、ぼくがスカートを放り込んだ時にはこんなに大事になるとは思ってなかった。

女子が先生に事情を話したため、女子更衣室に念入りなチェックが入っている。

無い、どこにも見つからない。

それはそうだ、先生と女子生徒たちが必死になって探しているスカートはその更衣室には無い。

ぼくがシンヤのかばんの中に入れたんだから!

普段ならもうとっくに三時間目が始まっている。

いくら探しても見つからないので、先生たちがぼくら男子のいる教室に入ってきた。

スカートが無くなった女子生徒は着替えられず、体操服姿のままだ。

「女子のスカートが無くなったの、何か知ってる人いる!?」

「……。」

「不審者がいたとか、何でもいいの!変な人見た人いる?」

「……。」

先生が困った顔をして言っているのを見たら少し悪いことをしたかなと良心が痛んだ。

……でも、もう後には戻れない。

ちょうどいいタイミングで「シンヤ」が保健室から帰ってきた。

よし、今だ。

「ピポパポピン!」

シンヤのかばんをひっくり返した、時間を元に戻した瞬間、中のスカートが飛び出してくるように。

そしてぼくは何事も無かったかのように時を止めた場所、自分の席に戻り直した。

「ピポパポピン!」

「あ!!」「ああーーーーーーーーー!!」「あった!!……」

「シンヤ!」「シンヤくん!!……」

「シンヤのかばんからスカートが!!」

「お前だったのか!犯人は!!」

「違う!違う!俺じゃない!中に勝手に入ってたんだ!」

「そういえばお前、体育の時間に一人だけ授業抜け出して保健室行ってたよなぁ?」

「本当は女子更衣室に忍びこんでたんじゃないのか!?」

「サイテー」「そんな人だとは思わなかった……」

「ちがうって!信じて!俺絶対にやってないから!なんかの間違いだよ!」

 

 

 

つづく