シンヤはその日から女子に嫌われるようになった。
必死に無罪を主張するシンヤ、他の女子はみんな信じていないが先生だけは信じているようだ、明らかに気を遣っていて、シンヤに優しい。
なんで?
それを見てイライラした。
また、シンヤにいたずらをしたくなった。
でも今日はまだやることが残っていた。
大嫌いな兄への仕返し。
自転車に乗れないからってバカにされるのは我慢できない。
いつものように兄は出かけるようだ、ちょうどいい、後をつけよう。
自転車に乗る兄、走って追いかけるぼく。
いつもなら見失ってしまうところだが、今のぼくにはトカゲがある。
兄に距離を離されるたび、時を止め、足止めをした。
これでばっちり付いて行ける。
すると、女の子の家に着いた、女の子と兄が親しげに話をしている!
ただの仲の良いクラスメイトってわけでもなさそうな雰囲気。
兄は付き合っていたのか、この子と。
よく見たらすごく可愛らしいじゃないか、なんだか複雑な気持ちになった。
しばらく物陰に隠れて観察していると、女の子も自転車に乗り、二人で仲良くサイクリングデートか?どこかへ行こうとしている。
どこへ行くつもりなんだ?
ぼくは休み休み時を止めながら二人のあとをつけた。
その途中、どうしても気になったから、時を止めているのを良いことに、二人のすぐ目の前まで近寄ってみた。
すごく楽しそうにしている兄。
家でこんな顔をしているのは見たことが無い。
それもそうか、こんな可愛らしい女の子と一緒にどこか楽しい所に出かけるのだから。
ぼくは思った。
この幸せをぶち壊しにしてやりたいと。
そして、兄の泣き顔が見たいと。
そんな邪な考え事をしながらチャンスをうかがう。
いつ、どうやって嫌がらせをしようか。
隣町まで来たかな?結構な距離を走ってきたはずだ。
二人は目的の場所に着いたらしい、道路沿いの広場に自転車を止めた。
ここで何をするつもりだ?
芝が生えた空き地のような広場だ、サッカーをすることができる広さがある。
だけど、今日はぼくたち以外、人影はない。
兄がこの広場で何をするか気になる。
だけど、目的は別らしい……。
広場を抜け、わきにある小道に入っていった。
その小道の周りは木々が生い茂っている、ちょっとした「森」だ。
人の手が加わってはいるけど、正直言ってあまり通りたくない道。
木々が邪魔して不快だ。
どんどん森の奥へと進んで行っている。
二人の足並みから考えて、何度もこの場所に来ているようだ。
知りたい、ここに何があるのか。
そして、二人の大切にしているその場所をぶち壊してやりたい。
「ピポパポピン!」
時を止めて二人を追いかけようとしたその時、
足を滑らせ、ぼくは転落した。