天使か悪魔か13

次の日もぼくは叫んだ、体力の続く限り。

やることがこれしかない。

地上にいる人に気づいてもらう以外、ここから脱出する方法が思いつかないからだ。

しかし、あの道……。

一日に何人、人が通るんだろう。

人の手が加わっているけど、ほとんど獣道のようなあの道。

一日にそう何人も通っているとは考えにくい。

ぼくの声に気づくチャンスは少ないはずだ。

でも、大丈夫。

きっと何とかなる。

兄と彼女がまたやって来てくれるはずだから。

あの足並みからして、何度もここに来ているのは間違いないんだ。

こうしてずっと叫び続ければ気づいてもらえる。

そうだ、この穴の事も二人は知っているかもしれない!

そうだ、きっとそうだ!

「おーーーーーい!!」

「おーーーーーい!!」

考えているうちに希望が出てきた。

おなかだってすいてたけど、もう今はそんなことはどうでもいい。

「おーーーーーい!!」

「おーーーーーい!!」

おしっこの臭いだってもう慣れた、何の臭いも感じない。

「おーーーーーい!!」

「おーーーーーい!!」

骨折した腕と足も何とかなる、動かさなければ痛くない。

「おーーーーーい!!」

「おーーーーーい!!」

昨日ぐっすり寝たから体力だってある!今日は一日中叫び続けるぞ!

「おーーーーーい!!」

「おーーーーーい!!」

もう、すぐそこまで人がやって来たような……そんな気だってしてきた!

「おーーーーーい!!」

「おーーーーーい!!」

その時、ふと重大なミスに気が付いた。

空を何時間も見上げて気づいた事があったのだ。

それは……。

雲の形や位置が叫び続けてからずっとずっと、変化していなかった……。

「時が……止まっている!?」

 

 

 

つづく