次の日もぼくは叫んだ、体力の続く限り。
やることがこれしかない。
地上にいる人に気づいてもらう以外、ここから脱出する方法が思いつかないからだ。
しかし、あの道……。
一日に何人、人が通るんだろう。
人の手が加わっているけど、ほとんど獣道のようなあの道。
一日にそう何人も通っているとは考えにくい。
ぼくの声に気づくチャンスは少ないはずだ。
でも、大丈夫。
きっと何とかなる。
兄と彼女がまたやって来てくれるはずだから。
あの足並みからして、何度もここに来ているのは間違いないんだ。
こうしてずっと叫び続ければ気づいてもらえる。
そうだ、この穴の事も二人は知っているかもしれない!
そうだ、きっとそうだ!
「おーーーーーい!!」
「おーーーーーい!!」
考えているうちに希望が出てきた。
おなかだってすいてたけど、もう今はそんなことはどうでもいい。
「おーーーーーい!!」
「おーーーーーい!!」
おしっこの臭いだってもう慣れた、何の臭いも感じない。
「おーーーーーい!!」
「おーーーーーい!!」
骨折した腕と足も何とかなる、動かさなければ痛くない。
「おーーーーーい!!」
「おーーーーーい!!」
昨日ぐっすり寝たから体力だってある!今日は一日中叫び続けるぞ!
「おーーーーーい!!」
「おーーーーーい!!」
もう、すぐそこまで人がやって来たような……そんな気だってしてきた!
「おーーーーーい!!」
「おーーーーーい!!」
その時、ふと重大なミスに気が付いた。
空を何時間も見上げて気づいた事があったのだ。
それは……。
雲の形や位置が叫び続けてからずっとずっと、変化していなかった……。
「時が……止まっている!?」