天使か悪魔か14

そういえば、昨日も今日と同じ雲の形をしていた!

いや……。

時が止まっていたとすれば「昨日」じゃない。

昨日だと思っていた日は「今日」だったんだ。

ここに落ちる前の出来事を思い返してみた。

穴に落ちる直前、ぼくはトカゲのスイッチを入れた。

兄を追いかけようとして。

そうだ。

トカゲのスイッチを入れて時を止めてから足を滑らせ、この穴に落ちたんだ。

それから一日経ったと思っていたけど、空は明るくなったり、暗くなったりしてない。

実は一秒も経っていなかった……。

……つまり、ぼく以外の人間はずっと止まっていた事になる。

それなのに無駄なSOSを送っていたというわけだ。

トカゲを探さなくちゃ、まず時間を元に戻さなきゃ……。

「あれ?」

無い。

トカゲが無い!

いつもズボンのポケットに入れておいたのに。

落としたのか?

穴の中を探す、が、見つからない。

ひょっとして……。

嫌な汗が流れる。

ひょっとして……。

……地上に?

今、自分の身に起こっている絶望的な状況をぼくは理解した。

「穴に落ちる前にトカゲを地上に落っことしたんだ!」

なんてことだ!

どうすることもできない!

時の止まった世界で動けるのはぼくだけ。

世界でたった一人、ぼくだ。

そのぼくがこの穴から自力で地上に出ることは不可能。

地上に出ることが出来なければトカゲを回収することも不可能。

トカゲを回収することが出来なければ時を戻すことも不可能。

つまり、時を戻す事が出来なければ「誰の助けも来ない」

永遠に。

ぼくは終わりを覚悟した。

 

 

 

つづく